嘘で救われる僕と、救われるという嘘 その1~2

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 さっき、首筋に触れてみたときに、その状態が、体調の悪い人の体に手を触れている状態が何か、とてもしっくりくる感じがしたのだ。  頭に触れた手が、温かくなってくるのを感じた。  この感じ…この感じは…!  手を通して何かが流れ込んでいくように感じる、この状態を、僕は知っている!  これは…!  何かを掴みかけたとき、母親が意識を取り戻した。  30前後の若い母親だが、頭に触れる光の手の心地よさにうっとりしている。  しっかり目が開いたところで、光は手を離した。  「気が付きましたか?どこか痛いところはありますか?」  意識がハッキリしてきたからか、光が手を離したからか、母親は後頭部を押さえて顔をしかめた。  「あ、あなたは…?」  「隣の柏木です、お子さんがママを心配して泣いていたので…」  母親は普段から貧血気味で、時々激しい立ち眩みでよろけることがあったようだ。  今日も、目の前が真っ暗になったところまでは覚えているが、あとは記憶が無いと言う。  いつもならよろけても、意識まで失うことは無いので、しばらく蹲っていれば回復するのだが、どこかに後頭部を強く打ち付けてしまったようだった。
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