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武志は、その名前とは正反対な柔らかい物腰の、少し内気な好青年だった。身長も高めで、どこか憂いを帯びた甘いマスクに、熱を浮かす女子が少なからず居た。
そんな武志が時折、考え込むような仕草やぼーっとしていることが増えたような気がして、聞いてみたのだった。授業中に先生に当てられた時も上の空だったようで、教科書の読む箇所を間違えていた。
『次に当てられた悠くんも間違えてなかった?』
寝てただけ、と返す。武志は、朗らかに笑った。
――なにか、悩んでること、あったら、相談に乗るから、なんでも言えよ。
僕は、自身の身長くらいの小さな滑り台に寄りかかりながら、切れ切れと、やや戯けた口調で伝えた。友達にかける言葉としては実直すぎる言葉に少し恥じらいを感じたからだ。
武志は目をぱちぱちと瞬かせた後、噴き出すように笑い、優しげな表情で『ありがとう』と言った。
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