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武志が死んだという連絡を受けて、郷里に戻った。
「悠くん。ほんとに、今日は……来てくれてありがとうね」
「いえ、お知らせいただき、ありがとうございます。葬式には来れなくて、本当にすいません」
「いいのよ……こうして来てくれただけでも……ほら、武志。悠君が来てくれたよ」
武志の家に赴くと、武志のお母さんが迎えてくれた。最後に武志の家にあがったのが十年も前のことになるので、会うのはそれ以来だった。記憶の中の姿よりだいぶ頬がこけていて、憔悴しきっている様子だった。
僕は、武志の写真が飾られている仏壇の前に立つ。写真の中の武志は、僕の記憶より少し大人びて、高校の時よりもいっそう格好良くなっていた。しかし、柔和で優しげなーーともすると、儚げに消えいってしまいそうな印象は変わらなかった。実際その通りになったわけだ。
僕は、膝をつき、線香をあげさせてもらい、深々と頭をたれながら手を合わせた。
「悠君が、この家に来るのも久しぶりね。毎日のように家に来て遊んでたのが、ついこの間のことみたい」
そう言うと、武志のお母さんは、また涙ぐんだ。
「兄弟のように、仲良かったよね。悠君が、遠くの大学に行ってあんまり会えなくなっちゃったみたいだけど……武志の今まで連れてきた友達の中で、たぶん悠君が一番遊んでいたと思う」
「……僕も、高校の時はずっと武志と遊んでいました」
大学に行ってから、一度も会っていなかったことは言わなかった。
武志のお母さんは、うんうんと頷くと、ぽつりぽつりと、思い出話に花を咲かせた。まるで失ったものを拾い集めるかのように。
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