if〜闇夜の選択〜

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目が覚めたのはお昼も過ぎた頃だった。部屋にダンはおらず、ぼーっとする頭を掻きながら居間へ行く。 居間では、母さんがお茶を飲んでいた。 「あんた、寝すぎじゃないの?ご飯は台所のテーブルに置いてあるからチンして食べて」 「はいよー」 「それと、なんであんたダンを部屋に入れてたの?朝からお父さんが、ダンがいない!って騒いで大変だったのよ。ほら、最近この辺り犬さらいが多いから……」 犬さらいと聞いて、昨晩の女が頭に浮かんだ。 ご飯を食べていると、居間のテレビからニュース番組が聞こえてきた。 "お昼のニュースです。最新のニュースをお伝えします。昨夜1時半頃、〇〇町の市道で刃物を持った女が犬を切りつけようとしていたところを、通りかかった警察官が発見し……" 俺は、びっくりして置いた箸を落としながら慌てて居間へ行った。 「この町じゃない。犬さらいってこの女なんじゃないの!?ちょっと、お父さん!」 と、母さんは外にいる父さんを呼びに行った。 テレビには、捕まった女の顔が映っており、俺はぞっとした。 昨日の女だ……。 "次のニュースです。昨夜2時頃、△△町の△△公園でキャリーケースを持った男にパトロール中の警察官が職務質問をしたところ、男は持っていた刃物を振り回し警察官に襲いかかりました。警察官が二発の威嚇射撃をし、男は取り押さえられ現行犯逮捕されました。 キャリーケースの中には、江戸時代最後の大判、元書(もとがき)・たがね打ちの万延大判金(まんえんおおばんきん)が入っており……" 昨日の公園の大判だ……。 "また、午前4時頃には、その公園に隣接するコンビニエンスストアに強盗が押し入り、レジにあった売上金約10万円をレジ袋に詰め込み逃走しました。男は身長……" 「やだ、近くの公園とコンビニじゃない。物騒ね〜。いや〜」 と、戻ってきた母さんが横で言っていたが、俺は何も言葉が出てこず暫くその場に立っていた。
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