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知らなかった。
アズミとタカヤがそんなことになっていたなんて。
アズミはそんな素振り全く見せなかったから。
セックスレスに家庭内別居なんて。
それからと言うものの、タカヤとはメールでやり取りするようになった。
けれど、もしアズミにまだタカヤへの気持ちが残っているのならーーー
今度こそきっぱり身をひこう。
そう思っていた。
いくら夫婦関係が破綻しかけているとはいえ、影でこそこそしているのはフェアじゃない。
それからの私はアズミと会う度に慎重に彼女を見た。
そして、わかったこと。
アズミと何度会っても彼女からタカヤへの愛情は感じられなかった。
ただ思うのはーーー
そう、これは執着だ。
私にタカヤを盗られたくない。
それだけなんだろう。
そう確信した私はタカヤに思いを打ち明けた。
ずっと好きだったこと。
今でもその思いは変わらないこと。
今度、部屋を取るから私の気持ちに応えてくれるなら一緒に過ごして欲しいと。
そして、今日。
エイプリルフールに託けてアズミに真実を伝えた。
タカヤが欲しいと。
アズミは嘘をつけない。
返ってきたのは溜息一つと嘘をつけないアズミの嘘。
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