西の国のとある屋敷

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 薬屋の主人に聞いた。  ぎろりと睨め付けると同時、視線を逸らして答える姿にやれやれと息をつく。何から言えば良いのやら。気まずく思うと途端に誤魔化し方も分からなくなるところは昔から変わらないらしい。 「また行ったのね」 「俺の勝手だ」 「勝手な理由で人様に迷惑をかけるような人間は駄目よ」  そんな男に育てた覚えはない。  そう暗に言葉裏に込めた思いをすくい取ったのか、目の前の美青年は目を細め見つめてくる。苦虫を噛み潰したような、とは東洋の書物を読み漁っていたときに見つけた言葉だ。 「諦めなさい」 「嫌だ」 「しつこい男は嫌われるのよ。嫌われたら関係を修復することは難しいって言ったでしょう」 「諦めないとしつこいは違うって」 「薬屋の主人は前向きなだけなの」
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