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ギリ、と強く握られた手首が音の無い悲鳴をあげる。全く、女性の手首を握り締めるなんて。まだまだ教育が必要そうね。
息をついて、せめてそれを剥がそうと手に力を込めようとするも、それは何故か叶わず。押さえつけられた腕はふるふると揺れるばかりで、大して動くことはなかった。
──え。なんで、まさかそんなことは。
目の前に迫った顔に恐る恐る視線を向ければ、ゆるりと余裕げな笑みが浮かぶ。その宝石のような澄んだ色の瞳が一層美しく煌めいた。
「今日は俺の話、最後まで聞いてもらうからな」
「……貴方、何かしたでしょう」
「隣町の薬屋の主人が言ったんだ。『種族を変える薬はあいにくとウチにも置いてないけど、君の探し物はこれでも充分じゃないかい?』って」
遠からずも当たっていた自分の予想に思わず目眩がした。目の前の男が得意げに服の中に落ち込んでいたペンダントヘッドを取り出したのを見れば嫌でも想像がつく。
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