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妻が死んだのは息子が18の時。 「ずっと待ってたのに、どこにいたんだ」 「……」 「また人殺しか。昔の僕のような可哀想な孤児を作ってたのか。弟や妹を引き取ったって世話してくれる人はいないんだぞ」 自嘲的に唇を歪め、身勝手な父親を呪詛する。 「すまない」 棺の傍らに跪き、干乾びた声で詫びる。闘病虚しく妻は去り、後には不仲な父と息子だけが残された。喪服の胸ぐらが掴まれ、力ずくで振り向かされる。 「義母(かあ)さんはあんたに騙されたまま死んだんだぞ、何も知らず教えてもらず夫は真面目な銀行員だって信じ込んだまま死んでった、何をしにでかけてくか知ってたらきっと止めたよ、心の優しい人だったから!」 一言一言が胸を抉る。 胸ぐらを目一杯揺さぶり、殴ろうと上げた腕を力なくおろし、そっけなく突き放す。 「看取ってくれて感謝してる」 「腐っても息子だからな」 妻は冬枯れの墓地に埋葬された。 涙の枯れ果てた息子はただただ俯き、私もまた俯いて、妻の冥福を祈った。
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