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 私たちを救助に来た大人たちに、私は聖女の力を最後の一滴まで使い切って魔物を倒したのだと説明した。それでも守り切れたのは、クライス一人だった、と。だからもう、私は聖女の力を使うことができないんだと。  本当は守ってくれたのはクライスで、私が力を失ったのは、魔王を封印するために聖女の力のほとんどを使ってしまったからだ。  そしてクライスが意識を取り戻す前に、私は神殿を離れた。  聖女の力を失った以上、そこにいる理由はなくなったから。そして私には、やらなきゃいけないことがあったから。  いつ破れるかわからない私の未熟な封印が解ける前にもっと強くなって、もし封印が破られてしまったら再び封印し直すために修行を積む。クライスが安心して暮らしていけるように、私は強くならなくちゃいけない。  そのために、私は百年前に魔王を倒したパーティーで聖女と勇者を助けていたエルフの師匠のもとに身を寄せたのだ。  一見気の良いエルフのおばちゃんに見える師匠はそれはそれは厳しくて、対外的には密かに夢だった製本師になるために教えを請うていることになっている私に、封印術も製本術もどっちも徹底的に叩き込んでくれた。  おかげさまで修行を終えた私は、クライスと再会するべく試験を受けたクリュスタルス魔法学園に、特待生として通うことが許されたのだった。  それがまさか登校初日、校内での魔術使用許可証が発行される前に校門で人質に取られてしまうとは。  しかも助けにかけつけたのが成長したクライス本人とは。  一年先に入学したクライスが魔道士科主席とは聞いてたけど、風紀委員長なんて役職についてるとは思わなかった。なんかもっとおとなしく引っ込んでるイメージだった。  七年も経てば人は変わるもんなのかなあ、と、現実逃避ぎみに思う。 「つきましたよ」  保健室へ、という言葉は嘘ではなかったらしい。目の前の扉には、「保健室 第五分室」と書かれていた。  ……保健室、そんなにいっぱい必要なの……?
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