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「違うんだよ、私に必要なのは! 共に青春を謳歌してくれる友だち!」 「友だち……そうですか。私には友人がいないので、よくわかりませんが……」 「ひどい!」  クライスの沈痛すぎて無駄に色っぽい表情に対抗して、私もせいいっぱいの沈痛な面持ちを作ってみせた。 「あんなに一緒にバカなことして遊んでたのに! 私の心をもてあそんだのね!」 「……は?」 「君は! 私の! 友だちでしょ!? むしろ親友では!? そう思ってたのは私だけ!?」  心底意外なことを言われたというように見開かれていたクライスの目が、だんだんうさんくさそうなものを見るように細められていく。 「……七年も連絡を絶っておいて何を」 「それにはのっぴきならねえ理由があったんだよぉ! この七年クライスどころか師匠と魔物の顔しか見てないからね!? だから君が友だちじゃないって言うなら私の友だちはゼロよ!? ノーフレンズノーライフよ!?」  古語をまぜてまくしたてる私に、クライスはますます訝しげな顔をする。  いやでもだって本当にのっぴきならなかったのだ。  聖女の魔力をなくしたはずの私は、万が一にも(残りかすみたいなものとはいえ)聖女の魔力を使って封印術の修行してるとことか誰にも見せられなかったし、結界の外に魔力を漏らすわけにもいかなかった。ちょっとでも漏らしたら感知した神殿の使者が飛んできてしまうし、下手するとクライスの正体までバレてしまう。  その辺深く突っ込まれたくないんだよという気持ちをこめて、私はじっとクライスの瞳を覗き込んだ。  クライスも私の真意をうかがうようにじっと見つめてくるものだから、なんだか根比べのようになってしまう。 「……わかりました」  何らかの葛藤の後で、クライスは低くそうつぶやいて、私の手を肩から外させた。 「友人としてお側にいれば良いのですね」  あ、これ絶対友人として側にいることで護衛の役目を果たそうとか考えてる顔だ。目のそらし方が納得してないけど折れてくれてるときのやつだ。  う~ん……無理強いしたくはないけど隣で堂々と護衛ヅラされるのも困るし、ひとまずはそれでもいいか。  魔王の封印が解けたときすぐわかるように、側にいた方がいいのは私も一緒だ。なんかコレジャナイ感がすごいけど、ここでゴネたところでクライスの気持ちを変えることはたぶんできない。 「そういうこと。というわけで、よろしくね、クライス」 「ええ、よろしくお願いいたします。我が君」 「……友だちにその呼び方ぁ?」  もう聖女じゃないっつってんだろうがこの石頭! 気持ちはどうにもならなくてもせめて外側くらい取り繕えよ! という罵倒の気持ちをこめて睨み付けると、クライスはなんだかちょっと意地悪そうな笑みを浮かべた。 「以前は普通にそう呼んでいたでしょう」 「あれは聖女モードをオンしてたから耐えられてたんだよぉ! 今は無理! もうただの庶民だから!」 「ではなんと呼べば?」 「リアナで頼む。っていうか七年前だって二人の時はリアナって呼んでたじゃん」 「仕方がありませんね。『友だち』ですから」  やけに強調された。  問題ない……はずなんだけど、なんか嫌な予感がするな……?
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