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スズメの言い分をだまって聞いていたリカ子は感心したように、ほぅほぅとうなずいて。
「なるほど……あなた、このお屋しきの良さがわかるなんて。かしこい子なんですねぇ」
「ヘッ、おだてたってムダなんだかんなっ!」
「いえいえ、とんでもない。そんなかしこいスズメさんに、ひとつ相だんがありまして」
「…………なんだよ、相だんって」
「実はわたし、あなたをおいかけ回している内におなかが空いてきてしまいまして。わたし、こう見えても食いしんぼうなんです」
「だったら何だよ」
「あなたを、食べさせてはもらえませんか?」
このリカ子の発言に、スズメも使用人たちもひっくり返りました。
「お前はほんとうのバカなのかっ、これからたべようって相手に“食べていいですか”って聞くバカがどこにいるんだっ! だいたい、スズメなんて食べれないに決まっているだろう!?」
するとリカ子はふしぎそうに首を横にかたむけて、
「えっ? 食べれますよ。スズメさん、知らないんですか」
「知ってたまるかいっ、聞いたこともないやい! そ、それに、そんなのウソに決まってる!」
「かしこいスズメさんならとっくに知ってると思ったんですが……とくにてり焼きにするとおいしいんですよ」
じゅるりとヨダレをたらし笑うリカ子に、スズメは羽先までさむけが走りました。
バカだと思ってた女に少しバカにされたような気分でムッとしましたが、どうやらそうも言っていられないようです。
かの女がウソを言っているようにも思えなかったからです。
今はとりあえず早くにげた方が良い。
「し、しかたないから今日のところは出てってやる。食べられるなら、ほかの仲間たちも心配になってきたからな。いいか。あくまでし・か・た・な・く、だ!」
そう言ってスズメは、パタパタパタッと開けっぱなしだったドアからとび去っていきました。
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