五月雨ライアー

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「ホントにどうしよ」  ソウは玄関で偶然会ったふうを装い、困っている彼女に話しかける。 「今日傘間違って二つ持ってきちゃったんだけど一個使う?」 「確かソウ君……だよね?いいの?」 「うん」 「ホントにありがとう!明日返すね!」  そう言って急ぎ足で雨の中を歩いていく彼女の姿を満足げに見送ってから、ソウはビニール傘を買うためにそこまで近くもないコンビニまで走った。  冷えた体を温めるために暖かい飲み物とタオルもビニール傘と一緒に買う。財布の中には五千円札が一枚に千円札が三枚と小銭があったので、昼休みにジュースを買った時に出た小銭で払った。 「千円はたけーよ、か。何がコンビニの傘は高いだ、嘘つき」  寒さのせいだけではなく震える手で傘を持ち、細身の男は灰色の景色の中に消えていった。
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