誘拐

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誘拐

「もしもし……俺だ……いや、その……元気か? ……なんてな」  オヤジからだ。聞き慣れたダミ声。 「なぁに? そっちから掛けてくるなんて珍しいじゃん」  白を基調とした北欧風キッチンにひとり。天鬼 玲奈(アマキ レイナ)は、片手で朝昼兼用のカップ麺にお湯を注ぎながら気怠(けだる)げに応える。 「いや……まぁ……別に……たまには、な。声でも聞かせてやろうか、なんてな」  歯切れの悪い物言い。特に用事もない訳? な~んかヤな予感しかしない。 「はぁ? 何それ。気持ち悪っ。今から昼飯(ひるめし)食べて友達と遊ぶんだけど? ラーメンだって伸びるし」  めんどくさ。ホントは予定なんてないんだけど。 「何? ほ、本当に友達か? まさか、男? 男じゃないだろうな?」 「違うってば。うっさいなぁ。一体何なの?」  折角の日曜の昼下がり。あたしの優美で至福のひとときが台無しになりそうな予感。  実は、ただひたすら、ぐうたらしたいだけの玲奈(レイナ)なのだが、空腹も相まって何だかイライラしてきた。すると、オヤジは予想だにしないセリフを口にした。 「ってか……下手こいて捕まっちまって、身動き取れないんだ。はは……」
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