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久しぶりに訪れた小学校は、初めて訪れた時と同じように、机もイスも全部が小さかった。
「これに座ってたなんて信じられない!」
七海ちゃんも同じように感じたらしい。
「すっかりオジサンですね、三郷くん」
「ダンディな魅力もいいでしょ?」
いたずらな返しにも屈せず、三郷くんは決め顔だ。抱っこされた思い出が甦ったのか、むずむずしている七海ちゃんを私は見つめる。
すっかり綺麗な女性になっていた。
六角学院大1年で、ボランティアサークルに入り、私達の後輩になったそうだ。児童をあやすのが上手で、三郷くんほどじゃないけど子どもに懐かれていた。
「今や七海ちゃんがボランティアする側かぁ」
「仁科おねーちゃんは、相変わらず人気ないですね」
「こればかりは仕方無いからね」
「でも、楽しそう」
「うん。向いてないけどね、楽しいよ」
私と三郷くんは、母校近くに引っ越した。七海ちゃんと出会った学童保育は、地域でもボランティアを開放していると知り、参加するようになった。
サークルで出会って12年経った今も、やっぱり三郷くんは子どもの人気者で、私は相変わらずだ。
眼の前で子どもに囲まれる三郷くんは、あの頃と変わらない大きな口で、「あー、お前らうるさい」と笑っている。
視線に気が付くと、七海ちゃんと私に順番にウインクした。
「二人も俺に抱かれたいなら、並んでね?」
はしゃぐ七海ちゃんの隣で、私は立候補する。
「仕方ないから、並んであげる」
「俺に惚れ直しちゃうかもよ?」
やっぱり、この人たらしには敵わない。子ども達に囲まれて、私達は満面の笑みを浮かべた。
了
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