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三郷くんに出会ったのは、大学のボランティアサークルだった。
入学直後、うろうろとキャンパス内を歩いていた私は、端から見ていいカモだったと思う。
「テニスどうですか?」「キャンプしましょう!」
受験でエネルギーを搾り取られたばかりの私は、勧誘する先輩方に圧倒された。
だから、渡された地味なチラシは逆に目立っていた。地域の清掃などを想像して、チラシの文言に目をやった。
「出会いこそ人生の宝探しだね@ゴミ拾い」
「どこまで限りなく降り積もる雪とともに〜除雪作業〜」
ふざけた紹介文が並んでいた。
うさんくささに、足を止めてしまった。
「お、入会ね! ウェルカム!」
ボランティアサークルの四宮先輩は目敏く、私の手元のチラシをひったくって、代わりに入会届を渡していた。
詐欺のような手口にあぜんとしていた私の隣に、いつの間にか三郷くんが立っていた。
「入会するの? 俺もなんだ!」
三郷くんは逆三角形の顔で、笑うだけで裂けそうな大きい口をしていた。
「俺、三郷です」
爽やかだった。
「名前は?」
「に、仁科です……」
「よかった、一緒に入る人がいて!」
爽やか過ぎた。
「あの、まだ入るわけじゃ」
「同時入会とか、運命感じちゃうよね! 俺たち付き合っちゃうかもよ?」
爽やかから一転、新手のナンパに変わった。
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