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嘘つき達の数奇な日常
*
「と言う訳だ。分かったな静也」
「何がと言う訳なんだ? そんな事を突然に言われて、はいそうですか、なんて言えるかよ」
テーブルを挟んだ向こう側に見える禿げ頭を睨みつけ、俺は間髪入れずに反論をする。
至極当然の事だ。それは到底納得しようのない強引な話で、俺には全くと言ってメリットなどない。
そのあまりにも横暴で身勝手な内容に、俺はイライラと怪訝な表情を隠せないでいた。
「いきなり家族会議を開くなんて言うから、一体何かと思えば。全くもって話にならない」
「いや、しかしなあ。本人がそれでいいと言っているんだから仕方がないだろう」
「は? 本人がって……」
俺は、部屋の隅で静かに佇んでいる少女――静琉の顔を窺い見た。
「マジで?」と漏れ出た俺の言葉に、静琉は無言で、こくりとその赤らめた顔を縦に振る。
「ほらな? だからお前もだなー」
静流の顔を見てにんまりとする、そんな親父の顔がクソムカつく。
「いや、だからって勝手に決めんじゃねえよ。俺の意見は聞かねえのかって話だろ?」
「お前もしかして静琉の事が嫌いなのか? こんなに可愛いのに何故だ?」
親父は平然と切り返してくるが、どうにも会話が嚙み合わない。どうしてそうなるんだと、思わず俺は脱力した。
「あのな……そう言う問題じゃない。俺だって静琉の事は可愛いと思ってるけど」
「だったら何の問題もなかろう」
ずずいと親父が詰め寄ってくる。
「もう一度言うぞ静也。静琉と婚約しなさい。こんなに可愛い妹を嫁にできるなんてなかなかない事だぞー、この幸せ者め!」
親父はそう言いながら、俺の額にビシッとデコピン一発をかましてきた。
「痛えな! いやいや『妹』って! それが問題なんだろ!」
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