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ぼくの心の中の世界には大きな草原があって、大きな大きなオオカミがかけまわっていた。そのオオカミはぼくに、まじめな顔でこうさとした。
「この世界はなあ、ウソだらけなんだよなあ。」
ぼくだけじゃないかもしれないけれど、“オオカミ=ウソつき”という記号を植えつけられた子どもたちは、やっぱりこのオオカミの言葉は信じちゃいけないものなんだってさ、そう信じるだろう。だけど、そのオオカミはあまりにもまじめにぼくにうったえかけるもんだからさ、ぼくはそのオオカミの言葉を頭のかたすみにでもちょこっとおいてやろうと思ったんだ。
ぼくの心の中の世界では、まもなく夕日がしずもうとしている。オオカミは草原から岩山へ飛び出して、夕日をしばらくさびしそうにながめると、それからそいつは、ワオゥとひとくちとおぼえをした。
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