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Epilog
「ちょっと慎太、先に行っちゃわないで。瑛斗、慎太と手をつないで」
神社の石積み階段を、次男の慎太が面白がってどんどん登っていってしまう。
何度か来たことがある神社なので、最上段を越えると、神社の鳥居を潜って、拝殿の方へ走って行こうとする。
瑛斗に掴まって、私たちが行くのを待たずに、手を繋いで拝殿の方へ歩いていく。
「みいちゃん、今日は走っちゃダメ」
階段を光星に抱かれて上がり、そこで地面に降ろされた娘は、兄ちゃんたちの後を追いかけていこうとする。
「みいちゃん、瑞季、ちょっと待て」
追いかけた光星に手を掴まれ、着物の裾の乱れを直してもらっている。私は彼女の靴を草履に履き替えさせると、女児用の小さなバッグを持たせた。
「受付してくるから、先に行ってて」
光星にそう言うと、『七五三祈祷受付』と書かれた場所へ向かった。
この後、写真館で家族写真を撮る予定になっている。瑞季の着物はレンタルだけど、転ばれたりしたら大変だ。取りあえず、ご祈祷が終わるまでは大人しくしてもらわないと。
5月1日生まれの娘は、「新緑が瑞々しい季節に生まれたから」と『瑞季』と命名した。活発で元気の良い子だけど、遺伝子のせいなのか、上のふたりに比べると、やっぱり女の子だね、というところもある。
写真館の見本写真を見せて、「みいちゃんも、こんなに可愛く撮ってくれるんだよ」と言っておいたら、着物を着るのを楽しみにしていた。
今も、歩きにくい草履のせいか、光星に手を引かれておしとやかに歩いているのを見て、思わず笑ってしまう。
祈祷の順番が来て、拝殿に上がらせてもらう。光星が瑞季を膝に乗せて座り、私は落ち着きのない慎太を挟んで、瑛斗と並んで座る。
慎太が生まれた年、瑛斗は保育園の年少だった。昼間、赤ちゃんとふたりでゆっくり過ごせるのが良かったので、このくらい間を空けると余裕が持てていいんだな、と分かった。
ありがたいことに、3人目も同じくらいに授かって、その瑞季が2歳になった後、保育園に入れた。今、私は彼女が保育園に行っている間、企業の託児所で働いている。
光星は相変わらず忙しい。でも子どもとの付き合い方が上手で、時間を見つけては、一人ひとりに合った相手をしてくれる。
子どもたちには平等に付き合っているフリをしてるけど、実は娘にはとびきり甘い。
「何でだろうな、息子たちは同志のように思えるけど、娘は別枠だな」とか言ってる。
ご祈祷を上げていた神主さんが振り向いて、頭を下げるようにいう。
私と光星が手を合せると、子どもたちも真似をして頭を下げる。瑞季も小さな手を合せて、神妙な面持ちで目を閉じている。
どうかこの幸せが、ずっと続きますように。
子どもたちと光星と、一緒にいられる時間を大切にしますから…
心の中で、そう祈った。
【end】
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