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vol.4
1
朝日が昇るのは、すがすがしい。
まだ覚醒途中の意識の中で、瞼(まぶた)の薄い皮膚越しに光を感じるのも、悪くない。
その寝床が心地よいものであれば、どんなに素敵な夢から追い出されようとも、目覚めの気分は良い。
「……ん……」
花のような、甘い匂いが鼻先を掠(かす)めた。
うっすらと瞼(まぶた)を開けると、自分とは違う艶の良い黒髪が目に入った。
笑うと口元にできるラインも、かわいい。
男の子なのに、かわいいなんて変かもしれないけど、でも。彼はカワイイ。
「……んー……」
開くと大きな瞳が現れる目は、まだ目覚めきるまでには少し時間がありそうだ。
彼は瞼越しの光さえもが眩(まぶ)しいと言うように、眉を寄せるとうるさそうに腕で目の上を覆った。
ああ、もう。せっかく鑑賞してたのに。
女はくすり、と笑うと顔を覆ってしまった腕に手を伸ばした。
「おーはよう。もう、寝坊しちゃうよ」
笑いを含んで言いながら、肌理(きめ)の細かい肌に触れた。
まだ、同じ感触の記憶が鮮明に女の肌にも残っていた。
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