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「……いや、なんか後半よくわかんないっすけど、鞄はいいっすね。俺も今度、そこの買おうかな」
何気なくスルーしながら、香坂も自分のロッカーを開けた。やはりそこにはこだわりアイテムが見える。
「魚屋にこいつを置いとくのは嫌だったしさ、ロッカーに入れっぱなしだったんだよな」
「あーなんか、それ、わかります。一課に置いといてもなんか不安ですよね。愛着あれば尚更」
鞄談義で盛り上がりはじめた男二人の間に、秋野がやってきた。
「ああーもう、なんか疲れちゃった。ちょっと入れて」
秋野はぶつぶつと文句を言いながら、早くも靴を履き替えようと壁一面に設置されているロッカーを開けた。取り出されたのはパイソン柄のハイヒール。
ヒールに施されたシャンパンカラーのビジューがきらめいている。
「あれ、秋野さんそんなの持ってたっけ?」
同じく帰り支度を始めた香坂が、隣のロッカーにいる秋野に声をかけた。
「ふふ、まーね」
意味深な笑顔を浮かべた秋野は、上機嫌でヒールに足を通した。
ああ、そういえば、あれって……
そう奈津子が記憶を呼び起こそうとした時だった。
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