vol.3

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「秋野、悪いけど帰る前に、ちょっと会計課に寄ってね」  榊が声を上げた。 「え、会計? なんでですか?」  コートを手に取った秋野が、聞き返した。 「先日の松振組。結城の準備と合算しちゃってたでしょ、自分の買い物を。……そう、コピーはここね」  榊はそう言いながら、引き出しからレシートのコピーを取り出した。  デスクに駆け寄った秋野はそれを受け取ると、顔色を変えた。 「えっ、いや、課長! これはなっちゃんの!」 「うーん。私はよくわからないんだけど、先月から課長に昇進した会計課長の近藤さんが二人分あるって言うんだよね。特に、靴と、バッグだったかな、靴はサイズが違うのが二足あるとかなんとかって、確か。女性だと、やっぱりこういうのに詳しいのかな」  秋野の顔から、冷や汗が出ていた。 「えっ、で、でででも!」 「なんだか問い詰められたんだけど、着替えって確か要らなかったし、こっちで受けた画像を見ても、結城は着替えてなかったからね。とにかく近藤課長が話を聞きたいそうだから、帰る前に寄ってね」  榊はにっこり、と笑った。 「……はい」  秋野は、血の気を失いながら、応えた。
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