vol.3

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 それを聞きながら、奈津子は妙に腑に落ちていた。  秋野がボンボンと高額なものをあっさり買っていくから、とんでもなく予算が潤沢なのかとも思っていたが。  よくよく考えれば、ここは官公庁の一角なのだ。  即ち。予算とは、税金である。  潜入無線を壊して罰金刑をくらった高見といい、これはある意味、当たり前だろうと思えた。  よかった、割と普通のところみたい。  奈津子は妙に安堵しながら、自分も帰り支度をしようと振り返った。  だが、そこには見慣れたロッカーがなかった。 「ん?」  そこにあったのは、壁だった。  正確に言えば、ウールの編み目がしっかり見える壁であった。 「はじめまして、ナツコ」  壁がしゃべった。  奈津子は、おそるおそるだが目線を声が聞こえた上の方へと向けた。  褐色の肌。大きな二重の目。猫の口みたいにくるりんと上がった口元。  よくわからないが、愛嬌がある大男が見下ろしていた。 「あ、どうも……結城奈津子です」  思い切り首を上げると、発言しづらいものだと言うことを、たった今知った。  人生、あらゆる所に学習ポイントがある。
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