38人が本棚に入れています
本棚に追加
「はーい、わたし、Dです。明日からトレーニング、よろしくなのです」
Dはそう言うと、盛り上がった上腕二頭筋を見せるべく、右腕を上げて見せた。
レスラーみたいな、速筋を自慢げに動かしてくれていた。ついでに、胸筋も奈津子の目の前でピクピクと動いている。
少々、近すぎて圧迫感が強い。
「あ、はは……お手柔らかに……」
若干の不安感を感じつつ、奈津子は愛想笑いを浮かべた。
大丈夫かな、わたし。
6
夜が更ける頃、地上は人工の明かりで満ち始めていた。
人々が一日の疲れを癒やすべく、くつろぎの時間を愉しむ丁度、その頃。
未だに電気が煌々と照らすオフィスで、苦虫を噛み締める人物がいた。
警視庁捜査一課長、西尾である。
「全く、どうなってるんだ、四課は」
思わず、腹立たしげな独り言が口からついて出た。
「例の、たれ込みですか」
西尾の傍で報告書を提出しようとしていた管理官の一人が、言った。
最初のコメントを投稿しよう!