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「ああ……松振検挙はいい。組対四課の手柄だよ。だが逃走中の被疑者確保に人員を回さないとは、どういうことなんだ。もうあれから、一週間だぞ」
そう言うと、西尾はマウスをクリックした。モニターの最前面にメールソフトが表示される。
『一課長どのへ。ゴキブリが一匹、六本松から逃げましたよ。早く殺虫剤撒いた方がいいんじゃないかな』
送信元は不明。解析にかけたがフリーアドレスを使用した、ビジネスホテルのロビーに設置されたパソコンからの発信だった。
直ぐに捜査員を派遣したが、防犯カメラもなく、従業員が目撃もしていなかった。
該当するメールアドレスの所有者が登録時に使用したメールアドレスや個人情報は全てデタラメだった。
「いたずら、ていうことは考えられませんか」
「ならいいがな」
西尾の返事を聞いた管理官は、頷くと報告書を置いて下がっていった。
だが、西尾は知っていた。
たれ込みメールは、西尾の個人アドレス宛に送られていた。ただのいたずらならば、警視庁が公にするアドレスへ送られるだろう。
それに松振組の検挙は、警視庁以外の組織からの情報提供を元に行われたと一部で噂されていた。
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