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あまり好ましくない状態になりつつあることだけは、なんとなく感覚としてわかっていた。
痛い。体中が、痛い。
見慣れたネオンの光が、やけに目障りだった。
その時、右手に握ったままのスマホが振動を伝えた。
『着信 応答しますか』
亀裂の入った画面に、緑のアイコンが浮かび上がった。
誰だ。
男は立ち止まると、手にしたスマホを見つめた。
表示された番号は、見知らぬものだった。
一回、二回、三回
コールは続いていた。
もしかして、警察だろうか。
男の背中を、冷たい汗が走った。
ごくり
唾を飲み込む音すらも、大きく聞こえた。
でも、もしも、誰か捕まってないやつがいたとしたら。俺みたいに仲間を探しているのかもしれない。
それは、一縷の望みだった。
男は震える指で、画面に触れた。
「……もし、もしもし……」
それは、女神からの着信だった。
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