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「ハァアア……来夢のこのアングル最高〜! 手を挙げた瞬間のワキチラ、衣装担当分かってるってカンジ〜グフフ」
画面に映るのは、ドーム会場のステージに立つ来夢。汗を飛ばして懸命に歌っている。均整のとれた肉体が躍動するたびに、男の胸も弾む。
男の人生に希望などない。
幼い頃から両親からはバカだのろまだと蔑まれ、学校では虐められ、超氷河期にやっとの思いで見つけた会社ではパワハラを受け鬱になり退職。
それからずっと薄暗い部屋でうずくまっているような日々だった。
そんな中、来夢だけが彼の心の支えだった。初めてネットの動画で舞咲来夢の姿を見た時、自然と涙が彼の頬を伝った。
(来夢は……ボクちんのミューズだ)
来夢とどうにかなろうなんて思っていない。身の程はわきまえているつもりだ。
だいたい、来夢はイケメン俳優の彼氏と同棲しているともっぱらの噂だ。ふたりがプライベートでも濃厚な接触を行っているのは、ファンの間では常識だ。
だから彼はただ、孤独に快楽を貪る。決して自分に視線を向ける事はない、画面の向こうの来夢に欲望を滾らせながら。
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