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「私今まで本ばかり読んでたし、大学は女子大だったから男性ってちょっと苦手なんです。なので積極的に出会いを求める気にもなれなくて……」
「あら?『出会い』なら今朝あったじゃない?」
さらりと千紗子さんに言われてドキッとした。
「あ、あれは親切な方に助けて頂いただけでっ」
「素敵な男性だったんでしょ!」
「うっ、……はい……」
一言、答えるだけで顔が真っ赤になるのが分かった。恥ずかしくてメロンパンを咥えてうつむく。
「ふふ、可愛いね杏ちゃん。またその彼に会えるといいわね」
ふわり、と優しく微笑む千紗子さんに無言で頷いて、メロンパンを飲み込んだ。
そうして千紗子さんは少しの間にこにこと私を見ていたけれど、突然キリっと顔を引き締めてから口を開いた。
「でも杏ちゃん。テレビの星座占いのこと、あんまり気にしちゃだめよ。今日はたまたま、杏ちゃんにとって困った出来事が続いただけだと思うわ」
「はい……私も普段は占いなんてほとんど気にしていないし、見てもすぐに忘れちゃうんです。それなのに今日だけは占いがなんだか耳の奥に入り込んだみたいで、変に意識しちゃって……」
「うん。誰にだってそういう日があるわよね」
「ありがとうございます。まあでも、私もともとそそっかしい性格なので、今日はいつもよりも気を引き締めて、一日を過ごそうと思います!」
「そうね。占いのことは別として、ミスをしないように気を付けるのは良いことだと思うわ。何かあったらいつでも言ってね。私に出来ることがあれば力になるから」
そう言って微笑んだ千紗子さんの優しさにジーンと来て、頼りになる優しい先輩に恵まれて、大好きな図書館で働けるなんて本当に幸せだな、と心底嬉しくなったのだった。
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