7. 二人と一匹暮らし、始めました。

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   夕飯を食べ終えて食器を下げながら、私は大事なことを思い出した。  椅子に座ったままテーブルを拭いている修平さんの隣に行った。  「あの、修平さん……」  「なに?」    「佐倉さんから伝言を言付(ことづ)かっているの……」  「伝言…?いつもは、必要なことがあればメールで連絡がくるんだけどな……」  そう言って首をひねる彼に、私はその伝言を告げる。  「『お誕生日おめでとうございます。今週木曜日にはお伺いしませんので、伝言で失礼いたします』って……」  なぜだか理由は分からないけど、なんとなく言いにくくて尻すぼみになってしまう。  伝言を聞いた修平さんは、瞬き一回分だけ間を置いてから、「ああ……」と言って苦笑いを浮かべた。  「そんなこと、今更気にする歳でもないのにな」  私から目線を外した彼は、ちょっと自嘲気味な笑いを浮かべている。  それを見て、私の心がまたぎゅうっとしぼられたように苦しくなった。  苦いものでも噛んでしまったみたいな顔をして笑う修平さん。  なんでそんな顔をするのか分からない。    でも―――。
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