8. 笑顔でいてほしくて、

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8. 笑顔でいてほしくて、

[1]  「じゃあ、行ってくるね」  「いってらっしゃい。気を付けて」  ここ数日でやっと朝の遣り取りにも慣れてきた私は、今朝も玄関でアンジュと一緒に修平さんをお見送りする。  修平さんの足も徐々に良くなっていて、今は松葉杖一本で歩けるようになっていた。  玄関扉に手を掛けた修平さんに、慌てて声を掛ける。  「あのっ!」  「え?」  扉を開ける間際の彼は、呼び止められて振り返った。  「あのね、…えっと、今日は遅くなりそうかな?……その、夕飯が…」  口の中でもごもごと喋る私を見て、彼は目を細めて「クスッ」と笑う。  「今日は遅くならないと思うよ」  その言葉にホッと肩の力が抜ける。こんなことにすらまだ緊張してしまう自分がちょっと嫌になってしまう。  でも、扉を半分開けて足を外に一歩踏み出した修平さんの笑顔が、私の心にかかる曇りを一瞬で払っていった。  「ハンバーグ、楽しみにしてるから」  「う、うん。頑張る。でもお仕事無理しないでね」  子どもみたいに無邪気な笑顔で手を振って出て行った彼を見送ってから、私は部屋の中へと足早に引き返した。  
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