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自分の状況を理解した途端、体中の血が逆流したみたいに熱くなる。
「ごっ、ごめんっ!」
焦って彼から自分の身を引こうとしたその時、修平さんの左腕がそれを邪魔するように私を引き寄せた。
さっきよりももっと密着した体に、心臓が暴れ出す。
ドクンドクン、と頭の中になり響く鼓動で何も考えられない。
彼の右手で掴まれている腕も、彼の左腕が回された背中も、火傷しそうなくらい熱い。彼の胸にピッタリと張り付いた私の顔は湯気が立ちそうなほどだ。
なんで、こんなことするの?
意味が分からなくて、「なぜ?」という言葉が頭をぐるぐると回っている。
頭が混乱して何も言うことが出来ずにいると、修平さんの体がそっと離れた。
二人の間に隙間が出来た瞬間、私はやっと大きく息を吸うことが出来た。
「あぶないから杏奈は座ってて。俺が水を持ってくるから」
頭の上から聞こえた声は柔らかくて、私は何だか泣きそうになった。
修平さんが持ってきてくれた水を黙って飲んだ。
アルコールのせいなのか、さっきの出来事のせいなのか、なかなか体の中から熱が引いて行かない。
手に持ったグラスから顔を上げられずにいるのは、向かいからの視線をずっと感じているから。
なんで、そんなに見つめるの?
居た堪れなくなった私は、一気にグラスの水を飲み干してから思い切って口を開いた。
「おっ…お水ありがとう!片付けしたら食後にコーヒーを淹れてくるよ……修平さんはゆっくりしててっ!」
「片付けなら俺がするから、杏奈こそもう少し休んでたら?」
「ううん平気!酔い覚ましに少し動きたいから」
「そういうことなら……でも無理はしないようにな」
「うん……」
それらの遣り取りの間、私は一度も修平さんと目を合わせることが出来なかった。
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