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私は両目を見開いて、息を呑んだ。
予想もしなかったその言葉に、心臓が早鐘を打つ。
どういうことなの…?
いくら私が男性とお付き合いをしたことが無くても、『朝まで一緒にいる』――その意味が分からないほど子どもじゃない。
また、私のことをからかってるの……?
修平さんの真意が分からない。今どんな顔をしているのかも。
私が顔を上げれば見えるのだろうだけれど、その勇気がどうしても出ない。
顔を上げることも、広い背中に置いた指先を動かすことも出来ずに、彼の腕の中で息を潜めていた。
無言で抱き合ったまま、どれくらい時間がたったのだろう。
彼がそっと腕を解いて、私から離れていく。
隙間から入ってくる空気が、ひどく冷たく感じた。
さっきまで私を抱きしめていたその腕は、手を伸ばせばまだ触れられる距離にあるけれど―――。
「ごめん―――聞かなかったことにして」
聞こえた言葉に、わたしは弾かれるように顔を上げた。
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