9. 好きにならないわけないだろう?――Side修平

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 そうしていきなり始まったアンジュとの生活は、大変なこともあったけど楽しいものだった。  それまでは仕事に打ち込みすぎて生活リズムが不規則だったのが、アンジュの朝晩の散歩の為に早起きをしたり、無駄な残業をしなくなったりしてずいぶんと規則正しいものに変わって行った。    休日には祖母とアンジュを乗せて車で遠出したりすることもあって、以前よりもきちんと休むようになった。    もちろん、抱えている案件が山場の時には散歩の回数が減ったりはしたけれど、ペットシッターの散歩を頼んだり、祖母が庭でボール投げをしてやったりと、アンジュにとってストレスにならないようにカバーした。  今思い返せば、祖母は何かを感じていたのかもしれない。  アンジュがうちにやって来た次の春に、桜の終わりと共に彼女は逝ってしまったのだから。
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