9. 好きにならないわけないだろう?――Side修平

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 階段から落ちてくる彼女を受け止めた後、体勢を崩して俺まで階段から落ちてしまった。下まで数段のところだったから尻もちくらいで済むつもりだったのに、着地を失敗して左足を捻挫してしまったのは計算外。  俺に抱えられていることに気付いた彼女が、真っ青な顔で俺を覗き込む。涙をこぼして俺を心配する彼女に、足よりも胸が痛んだ。    病院に付き添う時もそこから帰宅する時も、俺のことを心配しては謝罪を口にする彼女に、俺はどんどん苦い気持ちになっていった。  そんなふうに思わせたくて助けたんじゃない…!  喉まで出かかった言葉を飲み込む。今こんな風に言ったとしても、きっと彼女は責められているように感じるだろう。なにより、彼女を受け止めきれずに失敗した自分が情けなくて、なんて言えば良いか分からずに、彼女の方を見ることすら出来なかった。  そして送ってもらった玄関先。  急に泣き出した彼女に驚いて反射的に抱き寄せると、彼女の顔がみるみる真っ赤になっていく。  この一年間、一度も見たことのないその表情に、自然と胸の中が熱くなった。  彼女をもっと強く抱きしめたい感情が込み上げてたけれど、幸か不幸か片手は松葉杖を離すことが出来ない。  自分でも正体の分からないその衝動を、グッと飲み込んだのだった。 ──────────
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