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気付くと、目の前にドアがあった。
春の嵐にあおられる葉のように何かに押された俺は、気付くと杏奈の部屋の前に立っていたのだ。
そのまま踵を返すのが正しいんだと分かっているのに、根が生えたように足が動かない。
小さくドアをノックした。
少しの間ドアの前で佇んでいたけれど、部屋の中から気配はしない。
時刻はもう十一時になろうとしている。毎朝早くから頑張っている彼女ならもう寝付いている時間だ。
頭では分かっているのに足が動かない。
垂らした両手を握りしめた。
すると次の瞬間――――。
目の前のドアが静かに開いた。
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