9. 好きにならないわけないだろう?――Side修平

19/21
前へ
/271ページ
次へ
 気付くと、目の前にドアがあった。  春の嵐にあおられる葉のように何かに押された俺は、気付くと杏奈の部屋の前に立っていたのだ。  そのまま踵を返すのが正しいんだと分かっているのに、根が生えたように足が動かない。  小さくドアをノックした。  少しの間ドアの前で佇んでいたけれど、部屋の中から気配はしない。  時刻はもう十一時になろうとしている。毎朝早くから頑張っている彼女ならもう寝付いている時間だ。  頭では分かっているのに足が動かない。  垂らした両手を握りしめた。  すると次の瞬間――――。  目の前のドアが静かに開いた。
/271ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6095人が本棚に入れています
本棚に追加