10. 『恋』かどうか分からない。

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 目が合った瞬間、彼は満面の笑みを浮かべた。朝陽に負けないくらいキラキラと爽やかな笑顔。まるで何か重たいものを吹っ切ったような清々しい笑顔に魅入られる。  「おはよう」  言葉と同時に私の頬に唇を寄せて「ちゅっ」と音を立てた彼が、またニッコリと笑う。  い、い、い……今何を!?  口をパクパクと空振りさせながらみるみるうちに真っ赤になっていく私の頭を、慣れた手つきでひと撫ですると、修平さんはベッドからおもむろに起き上がった。そのままドアの方へと松葉杖を使って歩いて行く。  その後姿を見つめ呆然としていると、ドアを開けた修平さんが私の方を振り向いた。  「今日はアンジュの散歩に俺も一緒に行くよ。起きたばっかりで悪いけど、朝食より先に行きたいから、準備してから来てくれるかな?」  「え?……うん。分かった」  何だかよく分からないまま、彼の言うことに頷いた。
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