10. 『恋』かどうか分からない。

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 心臓が大きく跳ね上がった。  息を止めて彼の瞳を見つめる。  彼は私の両手をそっとすくい取って持ち上げると、手の甲にくちづけた。  私は見開いた目で、彼を見つめることしか出来ない。  頭が状況をまったく飲み込めないのだ。  ただ彼の唇の柔らかさと温かさを感じて、つま先から頭のてっぺんまでが一気に熱くなった。  そんな私を見た修平さんは、少し困ったみたいに微笑んだ。  「そんな顔しないで。可愛すぎて困る」  自分の耳を疑った。  い、い、いま、『可愛い』とか言いませんでした!?  「いつも可愛いけど、照れてる杏奈は可愛すぎるから」  まるで私の心の中を読んだみたいな発言に目を剝いてしまう。  そんな私の頬を片手で包んだ彼は、反対側の私の頬にチュッと音を立てた。  「~~~~!!」  耳まで真っ赤になって声にならない悲鳴を上げる私を見て、彼はニコニコする。  「そんなに怯えないで。いきなり取って食ったりしないからさ」  無邪気な顔でそんなことを言われても…!  何も言い返すことなんかできずに、私は頭から湯気が立ちそうなほど真っ赤になるだけ。  完全にショートしかけている私の頭をヨシヨシ、とばかりに撫でた彼は、それまでの無邪気な笑顔を消して、ふと真顔になった。  「俺は本気だよ、杏奈。本当に君のことが好きなんだ。ここに眠る祖母に誓うよ。君を大事にする。だから俺のことを好きになって、ずっと俺の側にいてほしい」  朝陽に照らされた彼の瞳は、宝石みたいに輝いていた。
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