11. 「すきです」

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 目的階への到着を知らせる音が鳴った後、エレベーターのドアが開いた。  手を引かれてエレベーターを下りると、修平さんは迷いない足取りでフレンチレストランの入り口まで進んでいった。  入口の所で彼がウェイターに名前を告げると、そのまま奥の席まで案内された。  その席の前まで来た時、私は感嘆の声を上げずにはいられなった。  「すごい!!」  【ご予約席】のプレートが置かれたテーブルの向こう側は、一面のガラス張りの窓。そこからは街が遠くまで一望できる。  暮れていく太陽がビルの間から差し込んで、街一面をオレンジ色に照らしている。一方では、日が当たらなくなった場所から『夜』になっていくのが見えた。  「オランジェットみたい!」  「オランジェット、ってチョコレートの?」    「うん!オレンジピールにダークチョコレートが掛かってるみたいな景色だよね」    密かなる好物の、その見た目のような景色を見れたことが嬉しくて、私は得意げに彼に説明した。  「くっくっく……」  私の目の前の席に腰を下ろしながら、修平さんは笑い声を漏らす。  「この景色を見て食べ物に例えるなんて……色気より食い気かな、くくっ…」  口に手を当てて笑いを堪えている姿に、私は自分の『失言』に気付いた。  そ、そんなに笑わなくっても!  頬を膨らませて、目の前で笑う彼を睨む。  「素敵な景色だな、って私だって思ったよ。ちょっと表現を間違えただけだもんっ」  「くっくっ、俺もいい表現だな、って思ったよ。怒らないで。食いしん坊な杏奈も可愛くて好きなんだから」  な、な、な、な………!!  こんな公衆の場でそんなことを平気で言われて動揺しないわけない。みるみる赤くなっていく頬を隠すこともできなくて、下を向いた。
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