11. 「すきです」

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 私も手に持ったグラスに口を付ける。グラスの底からプツプツと立つ泡が、口に入る前からワインの香りを届けてくれる。爽やかな香りの後、口に含んだワインのフルーティーな香りが鼻に抜けた。少しだけシュワっとした炭酸のようなのど越しを感じる。辛口なのに癖が全く無くて飲みやすい。  「おいしいっ!」  初めて飲むシャンパンの味に感動していると、修平さんは「良かった。飲めるようだったらおかわりも頼むよ」と言ってくれた。  「今日は飲み過ぎないように気を付けなきゃ」  前回の失敗を思い出してそう口にすると、目の前の修平さんが楽しそうに笑う。  「本当だ。酔った杏奈が可愛すぎて危険なのは、俺も学習したしね。それ以上可愛くなって、俺をどうしたいの?」  「~~~~っ!!」  さっきから彼の発言に翻弄されっぱなしの私は、今日の彼がいつもと違うことに気付き始めた。  告白されてから、「可愛い」ってよく言われるようにはなっていたけれど、こんなに甘い瞳で甘すぎる言葉を連発されたことはない。聞いている私の耳が溶けてしまうんじゃないかと思う。  それに、今日は得も言われぬ『色気』を彼から感じる。  いつも『紳士』に振る舞う彼の奥に仕舞われた、何かの扉が開きっぱなしなのかもしれない。
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