11. 「すきです」

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 次々に運ばれてくる料理を、二人でゆっくりと楽しんだ。  見た目の美しさ、味の意外性。話題は尽きることはない。  窓ガラスに映る景色は、いつの間にか夕暮れから薄闇へと変わっていて、街にともる灯りが薄紫の中で柔らかく光っている。  私の目に映るすべてが、夢の中で見る景色みたいに輝いていた。  宝石みたいな、美味しい料理。  絵画みたいな、綺麗な景色。  雑誌の中から飛び出したみたいな、素敵な男性の微笑み。  もしかしたら本当は夢なのかも。夢ならこのまま醒めないで―――。  「杏奈?どうかした?」  ハッとした。思いに耽っていたのに気付かれたくなくて、慌てて目の前の料理に向けた。  「う、ううん……何でもないよ。お肉料理も美味しそうだな、って思ってただけ」  「そう?お腹いっぱいなら無理しないで。シャンパンも無理になったらソフトドリンクを持ってきてもらうけど……」  「ううん、大丈夫。確かにもうお酒は要らないけど、お冷を頂いてるから平気だよ」  「そっか。でも欲しくなったらいつでも言って」  「ありがとう」  気を取り直して皿の上のお肉にナイフを入れた。力を入れなくてもスッと切れるから上質の牛肉だとすぐに分かる。フォークの先の一切れを口に入れると、柔らかい牛肉が口の中でとろけて、肉汁が口に広がる。  「おいしいっっ!」    今日何度目かのその台詞をやっぱり口にしてしまうと、目の前の修平さんが柔らかく微笑んだ。
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