11. 「すきです」

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 「レストランのスタッフに頼んで、空いている部屋を押さえて貰ったんだ。落ち着くまで杏奈はそこで休んだらいいよ。早く瞳を冷やさないと痛そうだ。これ、レストランで貰ってきたから使って」  そう言って凍った保冷剤を手渡してくれる。  「早く冷やさないと腫れそうだし、そのまま電車に乗ったらちょっと目立つかもしれないよ」  そう言われて、ハッとした。    私、あんなところで大泣きして……。  「ご、ごめんなさい!」  手に保冷剤を握ったまま、思いっきり頭を下げた。  「杏奈、顔を上げて…?」  「私がレストランであんなに泣いたら、修平さんが泣かせてるみたいに見られちゃうのに……修平さんに恥ずかしい思いをさせてしまって、本当にごめんなさいっ」  あんなに彼に恥をかかせまいと気を配っていたのに、最後の最後でこれ以上ない失敗をしでかしてしまった。自分が情けなくて、頭を上げることなんか出来そうにない。  「杏奈……」  私の肩にそっと手を置いた修平さんが、下げたままの私の顔を覗き込む。  「俺には杏奈の涙が嬉し涙だって分かってるから大丈夫。そんなにまで喜んでくれるなんて思ってもみなかったから、嬉しすぎるくらいだよ。それに、俺が泣かせたも同然だろ?」    最後に少し悪戯っぽく言ったのは、私に気を遣わせない為だと分かる。  「杏奈が泣き虫なのは知ってるのに、あんな公衆の面前で渡した俺が悪いんだよ。さ、分かったら顔を上げて」    優しい声色に顔を上げると、そこには声と同じように優しい眼差しで私のことを見つめている瞳があった。
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