11. 「すきです」

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 一度目は重ね合わせるだけだったけれど、今度は啄ばむように上唇と下唇を食まれる。形を確かめるように、彼の唇が私のそれぞれの唇を挟んで吸う。  初めての感覚に戸惑うばかりで、私は抵抗することすら思いつきもしなくて、ただ彼の唇が立てるリップ音と暴れ狂う心臓の音だけが、耳の奥にこだましていた。  時間を掛けて唇を堪能された私は、体中が熱すぎて足が震えてもう立っていられなかった。  ドアに背を預けたままズルズルとしゃがみ込みそうになる私の腰を、彼の腕が支える。  その間も、彼の唇は私のそれに合わさったままだった。  「……悪い」  力の抜けきった私を抱き止めた修平さんは言った。  「杏奈の答えが出るまで待つつもりだったんだけど……」  耳元で囁くように言う彼の吐息が熱い。  ただでさえ、耳元で喋られるだけで恥ずかしいのに、彼はそのまま「はぁ~~っ」と大きくため息をつかれて、ピクリと肩が跳ねる。  これ以上体の熱が上昇してしまったら、私、溶けちゃうんじゃないかな……。    そんな私の事情なんか知らない修平さんは、私の肩に額を「コトン」と乗せた。  「杏奈が反則したんだからな」  「………」  「そんな可愛いこと言われて、紳士でいられる男なんか居ないって、覚えた方がいいよ」  言い終わったと同時に、修平さんは私を抱え上げた。
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