11. 「すきです」

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 私から顔を離した修平さんが、目を見開く。  それが私の涙のせいだと、酸素不足でぼやけた意識下でも理解しているけれど、涙を止めることも「違う」と訂正することもできない。  乱れた息はまだ整わず、肩で息をしているだけで、涙を拭う余力も出ない。  目の前の顔がどんどんと曇って行くのがコマ回しのようにハッキリと見えた。  彼の綺麗な顔が、辛そうに歪む。  『そんな、顔、しないで』    そう言ったつもりなのに口からは息しか出なかった。  「ごめん」  私の上から退いた修平さんが、私の方を見ないでそう言った。  「杏奈の嫌がることはしない、なんて言ってたのに、泣かせてごめん」  ベッドから身を起こし立ち上がった彼は、私に背を向けたままそう言った。  「頭、冷やしてくるよ…何かあったら携帯に連絡して。俺の顔を見たくなかったら、ホテルからタクシー使って。もう遅いから」  ドアの方へ歩きながら、それだけ言ってから修平さんはドアノブを掴んだ。  違うの!!待って!!!  このまま彼を行かせてはいけない、と私の本能が叫ぶ。  私は息を吸い込んで、思い切り叫んだ。  「すきです!!」
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