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耳を押さえたらいいのか、頬を押さえたらいいのか。
私が胸の前で左手をうろうろと彷徨わせていると、その手を修平さんの左手が掴んで自分の方へ引き寄せた。
手繰り寄せられて彼の胸に埋まる。
彼を見上げると、愛おしそうに微笑む瞳が私を見下ろしていた。
「もう一回、キスしたい…」
「しゅうへい…さ」
彼の名前を言い終わる前に、唇が重なった。
最初は重ね合わせるだった唇が、少しずつ様子をうかがうように角度を変える。まるで形を確かめるように、上下の唇で挟み込んで吸い、味わうように食まれると、今まで感じたことのないゾクゾクした痺れが腰から這い上がってきた。
「ふ…んンっ…」
漏れ出た声が、自分のものとは思えないくらい艶めかしくてびっくりする。
その声が合図になったのか、唇の隙間をペロリと舐めた。
「ふぁっ」
更に強い痺れが走って、たまらず声が出た。その隙に修平さんの舌がするりと私の咥内に入り込み、そのまま私の舌を捕えた。
舌先同士を突っつくように合わせられて、私は慌てて舌を引っ込めようとしたけれど、彼の舌が私を追いかけて絡めとる。優しく撫でるように舌を舐められて、思わず体が大きく震えた。
舌の表も裏も、彼によって味わい尽くされる。優しいのに執拗に撫でまわされて、体の力がどんどん抜けていく。
も、もう無理~~!!
こんなに長いキスなんて経験したことのない私は、息苦しさのあまり彼の胸をドンドンと叩いた。
私の意図が伝わったのか、彼の舌が私の口の中から出ていった。
「はぁっはぁっ…」
肩で息をしながら彼の胸に崩れ落ちるように寄りかかると、「キスの時は鼻で息をしたらいいよ。」と色気の漂うテノールが耳元でそう言った。
「はな…で……」
「覚えといてね」
すっかり力の抜けた私の体を満足そうに抱きしめて、修平さんがニッコリと笑った。
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