12. 全然足りない。

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***  その日私が仕事から帰っても、修平さんが帰ってきた形跡は見当たらなかった。  今日は土曜日だから普通だったらお休みのはず。どんなトラブルかは分からないけど、今日は早く帰ってこれるといいのに、と思う。  昨夜はあまり眠ってないんじゃないのかなぁ……。  私が出来ることなんて何もないけれど、せめて修平さんが帰って来た時に少しでもゆっくり休めるようにしてあげたい。  『夕飯は要らない』と置き手紙に書いてあったけれど、自分の夕飯ついでにおにぎりを作ってラップをかけておいた。修平さんが食べなかった時は私の朝ご飯にすればいい。  ダイニングの端に置いたおにぎりの皿の下に、私も彼宛てに書いたメッセージを敷いた。 ――――――――――――――――――――   修平さんへ      お仕事お疲れ様です。   もし夕飯を食べてなかったら、このおにぎりを食べてね。   お腹いっぱいだったら、私が朝ご飯に食べるから置いておいてください。   あまり無理しないでね。           杏奈 ――――――――――――――――――――  昨日はうっかりソファーで寝てしまって、修平さんの手を煩わせてしまったことを反省した私は、今夜はソファでダラダラせずに早めにベッドに行くことにした。  そうして寝ることに決めたものの、修平さんからの置き手紙にあったことが頭をよぎってしまう。  修平さんの部屋で寝てってお願いされたけど………。  ゆうべは不可抗力だった。でも、男性の布団に自ら進んで入るなんて私にはとても勇気のいることだ。たとえ自分一人で寝るのだとしても……。  っていうか、私が彼のベッドで寝てたら、修平さんはどこで寝るの??  一緒に?それともソファーで?  背が高い修平さんは、ソファーじゃちゃんと眠れないよね……。  色々考えて頭がぐるぐるとしてくる。  『やっぱり無理』と結論を出した私は、すごすごと自分のベッドへと入って眠った。
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