12. 全然足りない。

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***  月曜日の今日。朝目が覚めてもやっぱり修平さんが帰っていないことにがっかりしながら、私は朝の日課をこなしていた。  アンジュの散歩に行く前に回しておいた洗濯機の中から洗濯物を取り出しながら、二週間前のことを思い出して、ひとり「クスっ」と笑う。  あの時、修平さんの洗濯した下着を見て、ひとりで大騒ぎしたんだったな。  少し前のことなのに、何年も前のことのように感じる。  今は随分と慣れて、下着ぐらいで大騒ぎはしなくなったけど。でもまだ、洗濯機から取り出すときと干すときには、少し気合いが必要なことは、彼には秘密なのだ。  「随分楽しそうですね、杏奈さん」  名前を呼ばれて顔を上げると、そこには久しぶりに見る人がいた。  「佐倉さん!」  「お久しぶりです、杏奈さん」  「佐倉さん、ご無沙汰しています」  ちょうど二週間前の月曜日に彼女にあれこれと家事のノウハウを教えて貰って以降、会えずにいた。もしかしたら、もう会うことはないのかも、と先週は思っていたのだけど……。  久しぶりに会えた佐倉さんに私は興奮した。また会えたら伝えたいことが色々とあったのだ。
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