12. 全然足りない。

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 その日も、私が仕事から帰宅した時に修平さんが帰ったきた形跡は見当たらなかった。  出迎えてくれるアンジュも、心なしか寂しそうにしている。  リビングでアンジュの首に腕を回して、彼女の柔らかい首筋の毛に顔を埋めながら、「無事にお仕事が上手く行って、修平さんが早く帰ってこれるといいね……」と呟いた。  アンジュの温もりがあるから、この広い家でなんとかやっていける。  そう思った時、私は彼の亡くなったお祖母さまの想いをハッキリと理解した。  お祖母さまは、この家に修平さんだけを遺して逝きたくなかったんだ。  彼の悲しみや寂しさに寄り添ってくれる存在が側にいることを、きっと願っていた。  そう気付くと、心がほんわかと温かくなった。  アンジュだけじゃなくて、私も修平さんにとってのそんな存在になりたい。  心から、強くそう思える。  「ちょっと仕事で会えないくらいでメソメソしてたんじゃダメ!私が強くならないと、修平さんに頼ってもらえないもん!」  口に出すと、スッキリした。  「このうちで、彼の留守をちゃんと守る!彼が帰って来た時に、少しでもその疲れを取ってあげられるように、私がしっかりしなきゃ!」  へこたれてる場合じゃないぞ、と気合を入れ直した。
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