12. 全然足りない。

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[3]    次の日の火曜日。  遅番だった私は、いつもより長い時間をかけてアンジュの散歩をした。  大好きな河川敷をゆっくりと歩いて、途中アンジュをブラッシングしてあげたりボールを使って遊んだりして、彼女とスキンシップを沢山取った後、図書館へと出勤した。  今朝も修平さんの帰宅の痕跡は見られず、置き手紙もなかったけれど、いちいちメソメソしないことを誓った私は、心に決めた通りに出来た自分を褒めておくことにした。 ***    「今日はなんだか慌ただしかったなぁ…」  夜九時前の暗い道を、街灯と自転車の灯りを頼りに帰ってきた。瀧沢邸の大きな門をくぐるとホッとするようになったのは、いつぐらいからだったろう。  「ただいま」  鍵を開けて玄関の中に入ると、いつもは玄関扉の前で待ち構えているアンジュがいない。  「寝てるのかな?」  尻尾を振って出迎えてくれる彼女がいないだけで、なんとなく胸がさわさわと落ち着かなくなる。  私は静かに廊下を歩いて、リビングに向かった。  夜九時だから、灯りの着けられてないそこは暗い。  カーテンを引いていない窓ガラスから、月明かりが差し込んでいる。  ドアの隣にあるライトのスイッチに指を掛けた瞬間、私はソファーの上の黒い塊に気付いた。
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