12. 全然足りない。

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 気付くと私の体はソファーに横になっている修平さんに、覆い被さるように乗っていた。  頬に当たる固い胸板。いつのまに回されたのか、腰には修平さんの両腕がしっかりと巻きついている。  「杏奈……」  降ってきたその声に、胸がギューっと苦しいくらいに締め付けられた。  いつもの優しくて甘いテナーボイスが、今日は少し掠れている。    「修平さん……」  そっと顔を上げると、さっきまで閉じていた瞳は、今はしっかりと私を見つめていて。  久しぶりに会う彼に胸が高鳴り、一瞬にして頬が上気する。月明かりだけの暗い部屋だから、私の顔が赤いことには気付かれていないはずだけど。  そんな私を知ってか知らずか、修平さんは目を細めて微笑んだ。    「杏奈、元気にしてた?」  「うっ、うん……、私は元気だよ。それよりも修平さんはの方こそ大丈夫?あんまり寝てないんでしょう?」  「さすがの俺も、今回はちょっときつかったかな……」  苦笑する彼の目元には疲労が色濃く残っている。  「そうだよね…お仕事、お疲れ様でした」  「………確かに、仕事は疲れたよ。でもきつかったのは仕事じゃない」  「え?」  「杏奈と一緒にいられないことが、こんなにきついなんて思わなかったよ」  私の腰に回った彼の腕に力がこもる。
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