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気付くと私の体はソファーに横になっている修平さんに、覆い被さるように乗っていた。
頬に当たる固い胸板。いつのまに回されたのか、腰には修平さんの両腕がしっかりと巻きついている。
「杏奈……」
降ってきたその声に、胸がギューっと苦しいくらいに締め付けられた。
いつもの優しくて甘いテナーボイスが、今日は少し掠れている。
「修平さん……」
そっと顔を上げると、さっきまで閉じていた瞳は、今はしっかりと私を見つめていて。
久しぶりに会う彼に胸が高鳴り、一瞬にして頬が上気する。月明かりだけの暗い部屋だから、私の顔が赤いことには気付かれていないはずだけど。
そんな私を知ってか知らずか、修平さんは目を細めて微笑んだ。
「杏奈、元気にしてた?」
「うっ、うん……、私は元気だよ。それよりも修平さんはの方こそ大丈夫?あんまり寝てないんでしょう?」
「さすがの俺も、今回はちょっときつかったかな……」
苦笑する彼の目元には疲労が色濃く残っている。
「そうだよね…お仕事、お疲れ様でした」
「………確かに、仕事は疲れたよ。でもきつかったのは仕事じゃない」
「え?」
「杏奈と一緒にいられないことが、こんなにきついなんて思わなかったよ」
私の腰に回った彼の腕に力がこもる。
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