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二度目のそれは、さっきのものよりも更に凶暴なものだった。
叫ぶ口を塞がれたから、最初から開いていた私の口内に彼の舌が容赦なく入ってくる。掻き回すように私の口の中で暴れたそれは、私の舌先を捕え、執拗に攻め立てた。
お互いの唾液が交じり合う。口の端からこぼれそうになる唾液すら逃さないとばかりに啜られた。
さっきまでの涙とは違う生理的な涙が滲み、背中から腰の辺りに掛けて、ゾクゾクと何かが這う様な感覚が駆け巡る。
いつもだったら及び腰になってしまう行為なのに、私は必死について行こうと、彼の首に絡めた腕に力を込めた。
「杏奈……俺も寂しかったよ。杏奈が全然足りてない」
耳元で囁かれると吐息が当たって体が震える。
彼はそんな私の耳元にも「ちゅっ」と口づけを降らせた。
耳元にあった唇がうなじを這い、時々吸うように「ちゅうっ」と音を立てる。その度に味わったことのない感覚が体を駆け巡っていく。
「~~んあっ、」
ずっと口元に力を入れて、我慢していた何かを、とうとう堪えきれなくなる。
漏れ出た声が自分のものとは思えないくらい艶めかしい。
慌てて唇を噛みしめて声を堪えた。
そんな私に気付いた修平さんの手が、私の頬に添えられる。その親指でそっと私の唇を撫でた。
「そんなに噛んだら切れちゃうからダメだよ。杏奈の声、すごく可愛い。もっと聞かせて」
「~~~っ!」
体中が燃えるように熱いのに、彼のその台詞に体温がまた上昇した気がする。
「ずっと杏奈の声を聞いていなかったんだ。どんな声でも少しも漏らさず聞きたいんだ。ダメ?」
瞳を妖しく光らせた彼が、小首を傾げる。
それは彼が意識的にやっていることだともう気付いているのに、その魅力に抗えない。
私は首を横に振った。
「ありがとう、杏奈」
ゆっくりと大きく、大輪の花が開くように、彼が微笑んだ。
そして再び私の唇を塞いだ。
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