12. 全然足りない。

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 私の唇を塞いだ彼は、私の頬に添えている手をゆっくりと動かし始めた。  最初は顎から首のラインをなぞり、肩から腕を大きく撫でる。    それまで頭や背中を優しく撫でられたことはある。  でも、その時の動きと今では何かが違った。  優しいのはいつもの通りなのに何かを探るような手つきは、違う意味を持っている気がする。  その上、何度も撫でられるとまたしてもゾクゾクと痺れるような感覚に襲われる。  「んんっ~っ」  唇を塞がれたままなので、彼の名を呼ぶことも出来ない。  そのうちにその手は私のウエストの辺りを行ったり来たりするようになった。  その動きでめくれたカットソーから露出した肌に、彼の手が少し当たった。  肩がピクリと跳ねる。  少しだけ触れた彼の手が熱い。私の肌も燃えるように熱くなっている。    ずっと離れず合わさっていた唇がやっと離れていく。  「好きだよ、杏奈」  彼の声が耳元でそう言った時、カットソーの切れ間から、大きな手が侵入した。  「やっ、」  声を出した時には、彼の手が私の胸のふくらみを包んでいた。  
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